台湾大地震をきっかけに再び流されるデマ
台湾東部でM6.4の大地震が起きたことで花蓮市を中心に大きな被害が出ています。台湾は東日本大震災の時に200億円以上の募金を送ってくれました。このご恩を返す時が来たと思いますので、私も台湾の支援のための義援金に参加したいと思っています。
まだ日本赤十字や日本の大手メディアでは台湾支援のための義援金はまだ開始されていませんが、その一方で義援金の募金先の注意事項なるものが流布されています。ドラえもん募金・サザエさん募金・日本ユニセフ・ピースウィンズなどは募金が北朝鮮に流れたりピンハネされるというものです。
とりわけこのドラえもん募金が北朝鮮に流れるという話に衝撃を受けた人達が多数います。
ドラえもん募金が朝鮮に流れてるってマジ?😡
— ポイージ・マ・マー (@MscFor0) 2018年2月7日
知らなかったな。かつて災害や海外移植が必要な人への募金のニュース見かけた時はドラえもん募金利用してたけど…使い道にそういう裏が😑まぁ今は家電がNTTではないので利用できないんだけども。
— クロティエ (@kuroty_e) 2018年2月7日
直接赤十字ね。了解です>RT
ドラえもん募金とサザエさん募金って朝鮮系なんや…初めて知った…💦
— ⚡️미카⚡️セブチ大阪2/28 (@aoivo_0406) 2018年2月7日
日本ユニセフはアグネスチャンさんやスタッフの収益に大半が消費されるなんて😅
募金する時は日本赤十字ね📝
ドラえもん募金に募金して北朝鮮のミサイル資金になるより、日本赤十字かな?
— MYO (@myo_yukikaze) 2018年2月7日
ドラえもん募金は、東日本大震災の時の寄付金をどこへ振り分けたか、そのNPOがどこと付き合っているかを見ていくと怪しいのが分かるよ。
ドラえもん募金が北朝鮮に流れるという話はデマである
まだドラえもん募金も始まっていませんが、ドラえもん募金が本当に北朝鮮や北朝鮮政府に流れているのならば避けた方が良さそうですね。しかし、このドラえもん募金が北朝鮮に流れているという話はデマです。この話は2005年2月頃に「ドラえもん募金スマトラ沖大地震被災者支援」で以下のような感謝と使途の告知が出たことを根拠にしています。
テレビ朝日では、平成16年12月28日から平成17年1月31日まで
「ドラえもん募金スマトラ沖大地震被災者支援」を行ってまいりました。
皆様から寄せられた善意の募金88,760,300円にテレビ朝日からの
寄付金2,500,000円を加え、募金総額は91,260,300円となりました。
このうち59,000,000円については、既に寄付を済ませておりますが、
残りの32,260,300円を日本赤十字社に寄付することを決定、
2月17日に贈呈しました。
この結果、寄付先と金額は下記の通りとなりました。3,000,000円 AMDA
3,000,000円 日本ユニセフ協会
3,000,000円 日本赤十字社
82,260,300円 ピース・ウィンズ・ジャパン皆様の善意に心から感謝致します
ドラえもん募金の大部分がピース・ウィンズ・ジャパンというNGOに注ぎ込まれたことになります。このピース・ウィンズ・ジャパンは紛争や災害の被害に遭った地域の支援を行うNGOです。このNGOは北朝鮮との繫がりが深いのでドラえもん募金の大部分は北朝鮮に流されると糾弾しているブログやまとめサイトが沢山あります。
しかし、この告知文をよく読むとおかしい箇所があることに気づくかと思います。「残りの3,200万円を日本赤十字社に寄付することを決定」「この結果、寄付先と金額は下記の通りとなりました」という結果に、「日本赤十字社 300万円」と書かれてあるのです。桁が1つずれています。誤記だと思われます。この誤記の件については2013年に id:hokke-ookami 氏が以下の記事で検証しています。
私もarchive.orgで2005年2月頃のドラえもん募金のページを見てみました。誤記が載っている日付は見られませんでしたが、2005年2月22日には誤記は訂正されています。82,260,300円は日本赤十字と書かれています。
「うっかり本当のことを載せてしまったのではないか」という穿った見方をすることも確かにできるかと思いますが、その見方を立証するならばより確からしい証拠を出す必要があるように思います。
またピース・ウィンズ・ジャパンと北朝鮮が繋がっているという記事や、大西健丞氏が連合赤軍と接点があるとするネット上の記事も全て憶測で証拠となるものは出てきていません。
サザエさん募金は北朝鮮に流れているとするのもデマ
サザエさん募金は北朝鮮に流れているのでしょうか?この話も何ら根拠となる記事は見当たりませんでした。サザエさん募金の熊本地震ページでは全額を日本赤十字に寄付したと書かれてあります。
FNSチャリティ:「フジネットワークサザエさん募金」 - 平成28年熊本地震被災者救援についてのご報告 - フジテレビ
日本ユニセフがピンハネしているという話についても、日本ユニセフ側でデマであるとして反論記事を出しています。
東日本大震災から私達が学んだ重要なことの1つとして、災害時には必ずデマが流されるので正しい情報に当たって検証していく姿勢が求められるということがあったのではないでしょうか。日本のマスメディアや国際機関の腐敗を憎む気持ちはわかりますが、だからといってデマを流して良いわけではないでしょう。
義援金の受付が始まっていない中で議論するのは早計だけど
台湾大地震の義援金の受付が始まっていない中で議論するのは早計ではありますが、デマはデマです。デマの流布には事実でもって訂正していく必要があるでしょう。
台湾で被災された方々に一刻も早く支援の手が渡ることを願っています。あともう1つ重要なツイートを貼っておきます。
言い方は悪いかもしれませんが
— ㄓㄤㄋㄞˇ/ㄚㄧㄚ (@Zhang_nai) 2018年2月7日
花蓮以外はいつも通りの台湾です。
これから旅行を予定している方
どうかキャンセルしないでください。
台湾の建物も日本と同じく
耐震性の高い建物が多いので安心してください。
現に私の住んでいる地域はいつもと変わらない平穏な日常を送っています。
#台湾加油
追記:台湾赤十字について
台湾赤十字は信用できないという情報も広がっています。東日本大震災の時に義援金が50億円集まったけど日本には13億円しか送られなかった、政治家などが着服している、台湾赤十字は国際的に赤十字として承認されていないなど。
しかし、日本赤十字社がまとめた資料では台湾赤十字から70億円の支援が届いていると記載されています。台湾赤十字が国際赤十字で非承認なのは台湾が国家として承認されていないためです。
「台湾赤十字社は信用できない」って情報がそもそも信用できるのか問題。それが台湾赤十字社を不当に貶め、他組織への利益誘導を図っているって可能性もありますよね。ちなみに東日本大震災のときには、台湾赤十字組織(PDF91番)から70億円超の義援金が届いていますよ。 https://t.co/w3zqCVw6Zh
— 鷹野凌 (@ryou_takano) 2018年2月7日
東日本大震災海外救援金の受け付け状況のご報告|義援金・救援金募集|日本赤十字社
台湾赤十字ディスってる人多いけど、南三陸に義援金を送ってくれたのは多くが台湾赤十字という事実。 https://t.co/rdBFp0QuKp
— うさ夫 (@kumausao) 2018年2月7日
これ自体が政治的対立の表出。台湾赤十字(中華民国紅十字会)が国際赤十字非承認なのは、中華人民共和国建国後にそちらの紅十字会が中国代表として承認され、台湾赤十字が追放されたため
— 有村悠@2/4砲雷撃戦ち02 (@lp_announce) 2018年2月7日
【震災】台湾人「台湾赤十字には募金しないで!!」と注意喚起【義援金】 - Togetter https://t.co/Uxm3rNwww0
台湾東部で7日午前0時50分(日本時間)に発生したM6の地震により建物などが倒れ被害が拡大。台湾赤十字組織のレスキューチームやスタッフらが、地震直後から被災地での救出活動や救援物資の配布を開始。200枚のふとん、150個の寝袋、10張りの大型テントを設置。懸命の救助活動を続けています。#台湾 pic.twitter.com/dgkJw0NOMb
— 日本赤十字社 (@JRCS_PR) 2018年2月7日
追記の追記
BuzzFeedもこのデマの件を記事にしました。こちらは一次情報源への取材も行われています。
ハフィントンポストも記事にしました。
拡散元になっているツイートが「朝鮮」と書いているため、北朝鮮だけではなく韓国も含まれるのではないかという指摘がありました。ドラえもん募金やサザエさん募金の使途は今まで書いていったとおりですが、正確性のため附記いたします。
記事中で引用しているツイートの台湾の建築基準について、耐震性が高いとするのは不正確であるとのご指摘がありました。追記にて紹介させて頂きます。
台湾の建物は日本と同じく耐震性が高いというのもデマですよ。これについては検証なさらなかったんですか?地震発生の度に建築物の耐震性や手抜き工事が問題視されています。
— たまちゃん (@tamachan283) 2018年2月8日
デマを流していた方がツイートを削除されました。削除されて謝ったのは良かったし立派だと思います。
謝罪文の再掲載
— しゅ~さん@NMLGお疲れ様でした! (@twinkle_horse) 2018年2月9日
「2月6日に発信した台湾地震寄付についてのツイートは、まった くの事実無根の内容でした。撤回して心よりお詫びします。申し訳 ございませんでした。二度とこのようなデマ情報を発信・拡散しな いことをお約束します。」

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